稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 外からラッパを鳴らす音が聞こえてきた。
「ああ、こうしてはいられないわね。出陣パレードが始まるようだわ」
 出陣パレード。
 そう言えば、今日は皇太子率いる王軍が王都を出発する日だった。あっという間だ。

 私は戦争が近く始まるなんてことこれっぽっちも考えずにいた間に、世の中は動いていた。
「ちょうど、パレードが見やすい場所にうちの馬車が止めてあるのよ。一緒に見ましょう」
 ローレル様に言われて、しばらく屋敷を離れると言うのに、まるでちょっと遊びに出かけるような感じで屋敷を後にする。
 人でごった返す大通りに面した場所に、いくつもの馬車がとめられていた。どうやらこのあたりに貴族の馬車が並んでとめられているらしい。
 庶民は馬車の周りには近づけないように警備されている。
 馬車までは小さな馬車で近づいて、大通り沿いに止められた大きな馬車に乗り替えた。
 馬車の中は、公爵家の所有するものよりも広々としていて、装飾は少ないけれど座席や背もたれのクッションは今まで座ったどの椅子よりも座り心地がよかった。
 私が驚いた顔をしていたからだろう。
 だって、王宮で大広間に置かれている椅子よりもクッションが素晴らしいのよ?デビュタントで一度行っただけなので、記憶は曖昧だけれど、これほど感動した座り心地じゃなかったはずだもの。
「領地までは遠いので。長旅には最高のクッションが必要なんです」
 なるほど。確かに広間の椅子よりも切実な理由だ。だから、開発に力が入れられたのだろう。
 それにしても、何てすてきな座り心地。
「おしりにクッションを縫い付けて歩きたいくらいですわ」
 はっ。私ったら、何を馬鹿なことを。
「まぁ!流石リリー様ですわね!ファッションリーダと呼ばれるだけのことはありますわ!」