稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 戦争なんて起きるわけないのに、おかしな話だと思っていたけれど。ジョージ様はもしかして知っていたのかもしれない。はっきりとは言われていなくても、騎士や兵の訓練などで噂が立っていたのかもしれない。
「リリー様、お茶をお持ちしました。……戦争なんて、驚きですね」
 メイも知らなかったんだ。私の耳にだけ入っていなかったわけではなさそうだ。
 最近決まったことだからなのか。それでも、仕立屋に王妃様が言うということは、厳重に秘密にされていたわけではないだろう。
 ローレル様は知っていたのだろうか?いや、女性たちにはいらぬ心配をかけないということで知らせずにいたのかもしれない。
 ……確かに、貴族は家で仕事の話をするのは野暮だという風潮がある。女性に政治の話を舞踏会で振る男性は嫌煙される。
 エミリオは知っていたのだろうか?
 戦争。
 ぎゅっと胸が締め付けられる。
 エミリーと会えない。
 違う、違う。
 それだけじゃない。エミリオは戦争に行くの?
 戦争の多くは爵位を継ぐことができない貴族の次男三男や、武功を上げて褒賞をもらおうという者、叙爵を夢見る平民だ。
 エミリオは?
 ……どういう立場なの?
 戦争に行くように命じられる立場?自ら望んで戦争へ行くことはないだろうけれど……。命じられたら行くしかない。
 長男だと、弟に家を継いでもらいたいと言っていた。
 貴族であれば、普通は次男や三男を兵力として駆り出される。もちろん領兵や私兵を率いて参加させられるのだが。
 うちのような高位貴族であれば、血を絶やさないようにと一族からの兵役は免除される。
 指先が震えて、お茶の入ったカップが上手く持てない。
 大丈夫。エミリオは、長男のはずだもの……。
 でも……もし、両親が「男らしさ」を証明するために「行ってこい」と言えば……。