稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「父上は、随分と忙しそうだな……。それで、僕に領地行きを任せたのか。……しっかり父上のサポートができるように頑張らないといけないな」
「お兄様、でも無理しないでくださいね」
 お兄様の顔色もあまりよくない。
「ああ、大丈夫だよ。無理はしない。ただ……ちょっとエカテリーゼのことがあって、気持ちが落ち着かないだけだよ」
 エカテリーゼ様のことで?やはり、1カ月以上離れるのが寂しいのかしら?
 ああ違う。寂しがり屋はエカテリーゼ様の方だったわね。お兄様についてくと言って譲らなかったのかもしれない……。それでもめたのかな?

「まぁ!なんですか、これ?」
「あ、ダメ!メイ、返して!それは大切なものなのっ!」
 ドレスのポケットに入れておいたハンカチを見つけたメイが驚きの声を上げた。
 エミリーがくれたハンカチだ。
「大切、ですか?……もしかして小さなころにお母様と刺繍の練習をした想い出の?」
 メイが勝手に解釈している。いや、まあそうだよね。
「それは大切なものですね。……もしかして、舞踏会へ向かうのが不安で持って行ったんですか?」
 さらに、勝手な解釈を始めた。

 どうしよう。嘘はつきたくないので、曖昧に笑って何も答えないでいると、なぜか突然メイが怒りだした。
「全く、ロバート様も旦那様も何を考えているのか。無理に結婚させようとする旦那様も旦那様ですし、エカテリーゼ様を優先してろくに舞踏会でフォローをしないロバート様もロバート様です」
「メイ、私が公爵令嬢だとばれないように近づかないようにと、お兄様にはお願いしたので……それに、お父様も私の行く末を心配して……」
 ああ、ごめんなさいお父様、お兄様。なんだか悪者にされちゃってます。
「そうですよね……心配ですよね。あのエカテリーゼ様がこの家を取り仕切るようになったら……」
 ふぅとメイが大きなため息をつく。心配?え?