稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「そうねぇ……私が婚約者だって言えば……きっと、驚くでしょうね……」
 え?エミリーが婚約者だって言うと驚くって、何でだろう。エミリーは私が公爵令嬢だって知らないはずだから、男爵だから驚くみたいな家格の差の話じゃないよね?だとすると、何を驚くのかな?年齢?もしかして、大人っぽく見えるけれどまだ成人してないとか?

 って、それよりも、いくらお父様がどんな相手でも構わないと言ったからって、エミリーの家は大丈夫なのかしら?いきなり公爵令嬢なんて恐れ多いとかならないかしら?
「不安な顔をしないで。大丈夫よ、すぐに、何もかもうまくいくわ……」
 エミリーの唇が、私の唇に優しく触れ、すぐに離れた。
 ビックリして、両手で口を押える。
「もう、しないって言ったけれど……婚約者になるんだもの……いいわよね?」
 ちょっと照れたような顔をしてエミリーが言った。
 そうよね。友達だけど……婚約者になるんだもん。周りの人に、不審がられないようにしないとダメだものね……?
 でも、どうしよう。
 エミリーはなんてことないかもしれないけれど、私、すごくドキドキしちゃってる。
「1カ月は長いわね……」
 エミリーが立ち上がった。
 さようならの時間だ。

 屋敷に戻ると、珍しくお兄様が先に帰っていた。
「ロバートから聞いたぞ」
 食事の時間に、お父様が重たい口を開いた。
「随分アレルギーで苦しい思いをしただろう……すまなかった……」
 お父様からの言葉は意外にもそれだけだった。
 もう次から舞踏会へ行かなくてもいいと言われると思っていたのに。
「ロバート、明日には領地へ出発するのだから、早く休みなさい。リリーも、疲れただろう。ゆっくりしなさい」
 疲れた様子のお父様は、食事の後に再び王宮に向かった。
 仕事の合間にわざわざ私たちの顔を見に来てくださったのかしら?
 それにしても、忙しすぎない?