稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「でも、贅沢は仕事だと学んだわ。お金は流さないといけないと」
「ふふ、確かにそれもそうだわね。だけれど、仕事としてお金を流すために使うのと、浪費するのは違うとリリーは分かっているわよね。そこが分かっていない人は多いのよ……残念なことにね」
 エミリーがふぅっとため息をつく。
「このお菓子は大丈夫よ。元々舞踏会の会場に並んでいるものを少しずつ分けてもらったものだし。余ったものは、捨てることはないわ。公爵家で働く使用人たちのお楽しみになるのよ」
 ほっと胸をなでおろす。
 下賤の者には過ぎた物でしょうと、残ったお菓子を床に投げ捨て、拾わせて楽しむ人もいると聞いたことがある。それを聞いた時は、そんなことをして何が楽しいのか分からなかった。
 けれど、残念ながら人には「自分が上だ」ということを見せつけることでしか、人間関係を築けない人がいると知った。
 好きだという気持ちで人間関係を築けない人がいると……。
 立場でいえば、侍女のメイより私は上だ。けれど、上下の関係じゃない。私はメイが好きだし、メイをも私のことを思ってくれている。
 雇われているからメイは私のために何かしてくれるわけじゃないと知っている。

「ああ、それから、お昼はまた、別に用意してあるから、お菓子ばかりたべすぎないでね」
 エミリーがウインクをとばす。
「ええ?目の前にお菓子が山のようにあるのに、食べ過ぎるなって言うの?それは、難しいわ……」
「くすくす」
「もう、笑いごとじゃなわよ、エミリー。……あ、そうだ」
 食べ過ぎずに済む方法があることを思い出す。
「ねぇ、エミリー、エミリーは刺繍とかレース編みとか興味あるかしら?女性の習い事とされてることに」
 エミリーが両手を頬にあてた。