稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「私も、会いたかった」
 背中に回される両腕の力強さ。
 ああ、こんなふうに、私は誰かに抱きしめられたかったんだ。
 ポロポロと、思わず涙がこぼれ堕ちる。
「あら、リリーどうしたの?私、何か酷いことしてしまった?」
 エミリーがオロオロとしている。
「ううん、違うの、そうじゃなくて……私、お母様が亡くなってから、こうして誰かに抱きしめられることが無くて……」
 お父様とお兄様はアレルギーが出てしまうし。
 侍女のメイが私のお姉様代わりに時々立場を越えて接してくれるけれど。それでもやっぱり立場の壁というものはあって。
「あら?そう言えば、私もこうして誰かを抱きしめるなんて初めてかもしれないわね?」
 エミリーがハッとする。
「ああ、もちろん、汗くっさい男同士の抱擁とか、迷惑だけれど付き合うことはあったけれど……」
 エミリーと手をつないであづまやに向かう。
「ねぇ、その時、その、男の人と抱擁なんて、ドキドキしたりしなかった?」
 エミリーがちょっと考える。
「あら、そういえば、ドキドキしたことはないわね。汗臭いとか、筋肉うざいとか、このノリ嫌いとか散々心の中で悪態はついていたけれど」
「そうなんだ。好みの方はいなかったのね。タイプじゃない人に抱擁されてもそんなものなのね……」
「な、なに?リリーってば、私のこと、誰でもドキドキする女だと思ってるわけ?」
「そ、そうじゃなくて、その、私は抱きしめられるだけでもドキドキしちゃって……エミリーにその、抱きしめられても、あの、胸がどきどきしちゃうから……」
 嬉しくてドキドキして。
「やだもう、かわいいこと言うから、言うから、もう一回抱きしめちゃうっ」
 ぎゅっとエミリーに抱きしめられる。
「ふふ、私も、実はリリーを抱きしめるとドキドキしてるわ。だって、汗臭い男たちとは全然違うんだもの。小さくて可愛くていい匂いがして……それに……」