稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

「すまない、リリー……。ブーケ・ド・コサージュのことも……。お前の功績を……」
「お兄様、頭を上げてください。私は全然気にしていませんし、むしろコサージュのことをいち早く広めてくださって感謝しているのです」
 エミリーが持っていても不審がられないように。1日も早いそんな世の中が実現するように。
「すまない……リリー。エカテリーゼには、領地に一緒に行ってほしいと頼んだが王都から離れたくないと断られて……今日、もう一度頼むつもりだったが……エカテリーゼとは1カ月距離を置いて色々と考えようと思う……」
 エカテリーゼ様のことを色々と考える?どういうことでしょう?
 お2人は仲良くやれているとこの間言っていませんでした?
 ああ、それよりも。
「お兄様、本当に大丈夫ですから、あの、……私、その……お父様にも言わなくていいですから。早くエカテリーゼ様のところに戻ってあげてください。ね?何なら、妹のことを思ってしたことだと、エカテリーゼ様を庇ってあげないと……」
 お兄様の背中を押して、それからすぐに庭の方へと駆け出す。
 お兄様は一瞬私を止めようと手を伸ばしたけれど、そのまま屋敷の方に視線を戻した。
 心臓がバクバクしている。
 どうしよう、どうしよう。
 お兄様が私が倒れそうになったことをお父様に報告して、お父様がもう舞踏会には行かせるわけには行かないと言い出したら……。
 どうしよう、どうしよう。
 迷路を抜けて、噴水のもとへ。

 あづまやにつながる道をふさぐようにして置かれた植木鉢をゴリゴリ移動させて中に入る。
 ちゃんと他の人が入り込まないように戻すのも忘れない。そして、あづまやにと駆け込んだ。
 どうしようって不安な気持ちが、目の前に現れたエミリーの笑顔にかき消される。
「リリー会いたかったわ」
 両手を広げて私を待っているエミリーの胸に飛び込んだ。