稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 違う、ジョージ様のせいじゃない。このくしゃみは、ディック様の……。お兄様のお友達の侯爵令息……。やばい人だ。
 慌てて、背後に立っているであるディック様から距離を取るために、ジョージ様の横へと歩いて行く。
「あはは、ディック、お前よりもジョージの方がいいようだぞ?」
 一番初めに声をかけてくれた婚約者のいるという……バズリー様がからかうように笑っている。
「何あれ。男性に囲まれていい気になってるんじゃないの?」
「この間も仮病をつかって気を引いたのでしょう?」
「ジョージ様を使って、ディック様をじらして落とすつもりなんじゃない?」
「やだわぁ。何それ。相当なタマじゃないの」
 女性たちの声が耳に届く。
 違う、そうじゃない。仮病なんて使ってないし、ディック様をじらすとかそんな気持ちなくって……。
 ディック様たちにもどうやら女性たちのささやきは聞こえていたようで、苦笑している。
「僕は君を見たときに、不思議な気持ちになったんだ。そんな回りくどいことをしなくても、是非話がしたい」
 ニコリと笑って、手を握られた。
 ああ、ダメ、やばいってば。
「くしゅん、くしゅん」
 くしゃみがまた出てしまう。
 目が痒い。
 息が……苦しくなってくる。
 全身がムズムズとしてきて、背中と足が熱を持ち始める。手袋を外すと、触れられたところから発疹が広がっているだろう。
「ご、め……さ……」
 立ち去ろう。
「おや、大丈夫かい?緊張して立ち眩みでも?別室に移動しようか……」
 ディック様が私の肩に手を回そうとする。
 無理、本当に無理。お兄様、助けて……。
「ディック様、その子の仮病に付き合うことはありませんわ」
 ぴしゃりと、エカテリーゼ様の言葉が響いた。
「いや、本当に苦しんでいるように見えるけれど」
 苦しい。とにかくディック様と距離を取りたい。助けて。もう、倒れそうだ。