稿 男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

 いくらアレルギーが軽い相手でも、誰かの婚約者を奪うつもりはない。残念だと思っていると、あとで来た男性が手を差し出した。
「こんなやつより、俺が相手になりますよ。ジョージと申しますお嬢さん。侯爵家の次男で爵位は継げませんが、次の戦争で武勲を上げ男爵位を賜れるだけの実力はあります」
「戦争?」
 思わず首をかしげる。
 戦争なんて、私が生まれてから一度も起きていない。いや、20年は起きていないのではないだろうか。
 我が国は大陸の中央部に位置しそれなりに大きくて力のある国だ。20年以上前には、同じほど大きな国が北側にあったそうだ。常に周りの国に戦争を仕掛け、領土を広げようとしていたらしい。だけれど、あまりにも頻繁に戦争を起こすため、国民の生活は疲弊していき、ついにそんな王家に反旗を翻す貴族もあらわれ内紛が起きた。そして、国は3つに割れ、我が国の脅威になるような力を失ってしまった。
 それ以降、我が国に戦争を仕掛けるだけの力のある国は周りには一つもなく平和が続いているのだけれど。
 ジョージ様がハッと口を押える。

「失礼。このような場で口にするような単語ではありませんね。怖がらせてしまい申し訳ない」
 ジョージ様が手を差し出した手にちょんと手を乗せる。
 ああ、ちょっと先ほどの人よりもアレルギーが出る。背中がぞわりとする。けれど、もしかしてある程度距離を保ちつつ生活するなら問題ないかもしれない。
「くしゅんっ」
 突然激しいもぞもぞ感に襲われくしゃみが出る。
 ああ、やっぱりジョージ様もダメだったかと、手を離してくしゃみの出る口元にもっていく。
「まったく、戦争なんて無粋な単語を、武闘派はこれだから困るよねぇ」
 すぐ後ろから声がかかる。
「まぁ、ディック様がまたあの子に声をかけているわ」
「どうして、ディック様が」