ユダの巣窟

呆然と立ち尽くしていたところ、1人の少年がこちらを見つめていた。年齢は10歳になるかならないかだ。

「おじさんも、お母さんに売られたの…?」

少年が覗いた僕の顔はとてつもなく青ざめ、童話に出てきた猫に化かされた狩人のような引きつっていた顔だっただろう。

「君、お母さんに売られたの…?」

震える声で言ったところ、彼はゆっくりと頷いた。長旅で疲れているようでもあり、不安を醸し(かもし)出していた。

「お金がないんだ…。だから、仕方がなかったんだって。」

そう言い終わると彼は馬車から這い出てきた。