何を支えに生きているかは人それぞれとは言っても、理解しがたいものは理解しがたいのだから仕方がない。

 粗悪品としか思えない崩れた美少女フィギュアが信じられないような値段で売れたので、大滝はなにか福の神に出会ったような気持ちになった。

 店を始めてからこっち、ここは自分を含めて疫病神の見本市かと思うようになっていたので、これは僥倖だった。


「だから売れるって言ったじゃないですか」


 と、信じられない値段をつけた当の本人たる安見がしたり顔で言う。


「完璧じゃないものに美を見出す感性ってやつですよ」

「だとしたらおれもお前も美しくないと困るなあ」


 ただの冗談だったが、これには安見はオエッという顔をしたし、岩野はよくわかんないけど面白い話かな、と思っているような感じで笑っていた。


「わかりませんか。俺が言いたいのは、従業員がこうして成果を出したことだし、ここはひとつ肉でも奢ってやるのがよき経営者の在り方では、とこういうことですよ」

「なるほど。自分の金で食え。自分の金で食う肉はうまいぞ」

「人の金で食った方がうまい。それに、俺のおかげで稼げた金でしょう」

「値札を勝手に書き換えろという指示はおれは出してないからな」