安見は岩野から微妙に距離を取りながら、真面目くさった顔で考える。真面目腐った顔をしたところで、暗いから見えないのだが。


「店長の知り合いに誰かいないんですか? 電気周りのことに詳しい方は」

「残念ながらおれの電話帳は四次元ポケットじゃない。そんな便利なやつが、いた」

「いるのかよ」


 ほどなくして、『特殊電機屋』というちょっとおかしな文字が印字されたワゴンがやってきて、中から小柄な男が下りてきた。


「わっす!」


 原型がなんなのかわからない挨拶をその男はした。いろんなところにピアスの穴が開いている。


「どうも、大滝の孫の大滝です」


 大滝は馬鹿の挨拶をした。


「毎度どうも、特殊電機っす。お祖父さまには大変お世話になってるっす」


 実は見た目で引いてしまっていた大滝だが、しっかりした青年らしい。こんなまともな挨拶は久しぶりに聞いたと思う。うちのバイトに爪の赤を煎じて飲ませたい。


「じゃあその代わり店長は腐ったバナナ飲んでください」安見がぽつりと嫌味を言った。