突然、店が真っ暗になった。天候も荒れてはいないし、電気機器を一度にたくさん使ったということもない。ともかくブレーカーを調べてみたけれども、異常は見つからなかった。


「店長、暗いですー」


 運悪くトイレで大をしていた岩野が一番の被害者だ。大滝は何をやっとんのやら、と思いながら岩野を救出した。


「暗くてちゃんと拭けてるかどうかわかりません」

「ウォシュレット使え。あ、使えないのか」


 つくづく悲劇である。

 ちゃんと拭けているかどうかわからない岩野から微妙に距離を取りつつ、大滝は外の様子を見た。案の定、外の建物は煌々と電気が点いており、謎の停電はリサイクルショップおおたきだけで起きているかのように思われた。

 実際には大滝の祖父が深く関わっている場所すべてが停電していたのだが、それはその時の彼らには知りようもないことだった。


「安見は」

「いませんね……」