「これは駄目だ、占い師さん、申し訳ないが大滝を追ってください。オレは店にいます」

「なんで? イケメンは追いかけなくていいの?」

「岩野は最悪いなくなってもいいので、オレは店を守ります」

「はあ……」

「ささ、お早く」

「はい……」


 占い師はなんでこうなったんだろうな、と思いながら大滝が行った方向へ向かった。幸い大滝はただすごい勢いでコンビニにフライドチキンを買いに行っただけであり、すぐに店に戻ったため、コンビニの店員をびっくりさせた程度の被害で済んだ。ただちに大滝に憑いていたものを落とし、占い師は安堵した。

 すっかり元に戻って、自分の恰好をやや恥ずかしそうにしながら戻って来た大滝と汗だくの占い師は、レジ前にふんぞりかえってスマホを触っている安見を発見して、あらやだ、と思った。しかも、店長が来ているというのに「あ、戻りましたか。お帰りなさい」と悪びれもしない。

 ここに至って、占い師の恋情は一気に冷めてしまった。なんでこんな男少しでも気にしていたんだろう、死ねばいいのに、というぐらいの、急な冷め方だった。

 すると安見には死ねばいいのに、の部分だけが伝わり、え、何、急に、こわ、と青ざめた。


「じゃ、どうもありがとうございました」


 オフショルなんかもう着ない、と占い師は思った。なんでオフショルなんかもう着ない、と思ったのか、安見にはわからなかった。岩野は自分がなんで走らされたのかわからないままとうとう自宅にたどり着き、まあいいや、と思って飯食って風呂入って寝た。