「いらっしゃいませー」
「岩野、それはマネキンだ」
「え?」


 岩野陽が加わり、リサイクルショップおおたきのスタッフは三人となった。

 岩野は悪い子ではないのだが、アホの子ではあった。スタッフルームのテーブルの上のカゴには常にバナナが常備されるようになった。大滝はストレスが溜まるとバナナを食べるのがやめられなくなる。

 相変わらず客は来ないし、祖父は顔を見せるでもない。


「店長、そんなにバナナばっか食って飽きませんか」
「飽きるもんか。バナナはうまい。おれを救うものはもうバナナしかない」
「給料上げてくれたら俺も救いますよ」
「バナナうまい! バナナうまい!」


 そこへ大滝と安見が不毛な争いをしている場に、岩野が山盛りのバナナを持ってきたので大滝は驚いた。


「店長、これ、よかったらどうぞ」
「どうしたんだこれ」
「神社の裏でゴリラを飼ってるって言ったらみんなが分けてくれました!」
「みんなとは」


 安見は聞かない方が良いです、と言った。岩野を取り囲むいろんな女の顔が見えたからだ。


「よくわからないけどわかった。バナナは貰っておく」


 大滝は二キロ太った。