唐笠男は適当に返事をすると、札の貼り直しを試みた。「うおおおおおおお」そんなに叫ばなくちゃ駄目なのかな、と大滝は思った。でも、そんなに叫ばなくちゃ駄目ですか、と訊いたら駄目そうな雰囲気なのでそっとしておいた。

 しばらく叫び続けた唐笠男は、「おわりました」と枯れた声で言った。

「30万、どこに振り込めばいいですか」

「キャッシュでお願いします」

「キャッシュかあ」

「あ、領収書忘れた。お札の裏でもいいですか」

「それが是か否かはあなたに決めてほしい感じですね」


 支払いをしているうちに、安見と岩野の体は水色くらいになり、呼吸が安定してきた。


「落ち着いてきたようだ。でも30万か。15万ずつ給料から天引きしようかな」

「そんなことしたら訴えられますよ」

「冗談だよ、冗談」


 大滝はまあまあ本気だったが、安見は気を失っていたので誰にも見抜かれなかった。