「店長、これなんですか?」

 岩野が持ってきたのは、真っ赤な紙に読めない文字が書いてある紙幣程度の大きさの紙だった。

「なんだそれ。どこから持って来たんだ」

「電化製品コーナーの裏の壁に貼ってあったんですけど」

「そうなんだ」


 多分剥がしてはいけないものだったのではないかと思いながら、大滝はありがとうね、と受け取った。岩野だってなにも悪気があるわけじゃないんだから。


「店長、今日なんかめっちゃ寒くないですか? 空調上げてさせてください。でないと死にます」


 と、本当に死にそうな安見を見てようやく、ああ、やっぱりやばかったんだなあ、と大滝は感じた。


「やばいって何がです?」


 大滝は赤いお札を見せた。


「これは強烈ですね。映画の小道具みたいじゃないですか」

「だよねえ」


 本当に小道具であってほしかったが、どうもそうではないらしい。歯の根が合わなくなった安見のため、上着を用意し、石油ストーブを炊いた。大滝は暑くなってきたので、裏口から外へタバコを吸いに行った。