「よかった! 生きてたんだな」

「もしかして」


 安見ははたと気が付いて、松茸を持ってリサイクルショップの敷地を出た。なんだなんだと追いかけてきた大滝は、敷地の境をまたいだ途端に松茸たちが急に静かになったのを見て衝撃を受けた。


「殺した! 殺した!」

「違いますよ」

「なんてことをしやがる!」


 今にも安見に掴みかかる勢いの大滝に、体格差を考えれば負けは確実と考えた安見はすっとリサイクルショップの敷地に戻った。

 するとどうだろう、松茸たちは再び賑やかに喋り出したのである。


「ああ!」


 大滝は歓喜の叫び声を上げた。安見が考えたとおり、この土地のなにかが作用して松茸が松茸ではないなにかになっていたのだ。松茸ではないなにかとはなんなのか、それは安見にもわからない。


「大滝さんの松茸も持ってきたらまた喋り出すんじゃないですか」


 大滝が喜ぶだろうと思って安見は言ったが、大滝はえ、と固まり、わなわなと震え出した。


「そんな……スマッシュ……」

「まさか大滝さん」

「ああ……焼いて醤油かけて食った」


 まあ、美味しかったなら良かったんじゃないですか、と安見は言ったが、大滝はしばらく立ち直れなかった。

 ちなみに岩野は、「松茸? オレは大丈夫なので、二人でどうぞ。前に食べたとき、そんなにおいしいと思わなかったんですよね」と笑った。