「まあ、屋台の金魚とか死ぬやつはすぐ死にますしね」と安見は慰めを口にした。

「カブトムシを死なせたとき以来のショックだ」大滝は深く嘆いた。

 松茸を診てくれる病院や、蘇生する手段がないかを懸命に調査したが、インターネット広しといえども有用な情報はまったく手に入らなかった。大滝のスマホは狂人としか思えない検索履歴でいっぱいになった。

 松茸が死ぬってなんなんだろう、と安見は思っていたが、激しく落ち込んでいる大滝の前でそれを口にするのは憚られた。

 残りの松茸はまだ冷蔵庫にある。


「ほかの子はまだ生きているだろうか」

 子って言うのウケるなあ、と思いながら安見は冷蔵庫を開けた。冷蔵庫の中からは、最近コンビニのチキンが値上げを敢行したことへの文句や、初恋の相手、突然謎の球体が自分の家の屋根に降りてきて翌朝には無くなっていたことなど、実に様々な話題が聞こえてきた。