「いらっしゃいませ」


 大滝はまずは見て学べ、という視線を安見に送る。その視線を確認しないうちに、安見は大滝の後方についた。


「なんかお探しですか」


 見て学べという視線を送ったわりに、大滝の接客は口調も雑ならエプロンのポケットから手を出しもしていないという有様で、清々しいほど学ぶべき点が見当たらなかった。面白くなった安見は、大滝の後ろで全く同じポーズをとり、「なんかお探しですか」と言った。

 驚くべきことに、青年はそんな異常な接客をされているにも関わらず一切動揺しなかった。かえって安見の方が恥ずかしくなった。うっすらと見えてきた青年の脳内には、まるで鏡のように大滝と自分の姿が映し出されていたからだ。


「えーっと」


 一瞬遠くを見た青年は、そうそう、と自分の目的をやっと思い出したというようにウエストポーチを探ると、くしゃくしゃの紙を取り出した。求人情報のチラシである。


「このお店、どこだかわかりますか?」


 青年が指差した店を見て、大滝と安見は顔を見合わせる。リサイクルショップおおたきでリサイクルショップおおたきのことを訊くか? と思ったからだ。