【こちら側のどこからでも切れます】という表示に、大滝はよく騙される。

 大男がヨーグルトについてきた砂糖袋と格闘している姿は滑稽というか妙な愛嬌があり、あるいは母性をくすぐられる人もいるかもしれない。

 くしゃくしゃになった袋を一旦置いて、大滝は器用な手つきでバナナをスライスした。


「乾燥バナナをヨーグルトに漬けて戻すという手もありますよ」と安見。

「うーん、おれは生のバナナでやるのが好きなんだ」

「へえ」


 昼休みのOLみたいな会話だ。スタッフルームにはいつになく穏やかな時間が流れていた。


「今度ね、山に行こうと思ってるんですよ」

「山?」

「はい。きのこ狩りに」


 きのこ狩りか、いいなあ、と大滝は思った。