真相はこうだ。

 店を抜け出した空っぽの着ぐるみは夜の歩道を駆け抜けた。目撃者もいたにはいたが、暗くてよく見えず、なんかやばそうな感じの人がランニングしてるな、と思うだけ思って、我関せずを通した。

 着ぐるみが陸橋を越え国道を渡りどこへ向かったかというと、それは昨日岩野と写真を撮った女子高生の一人のところであった。

 着ぐるみは女子高生の家のインターフォンを一度だけ鳴らしたのだが、到着が深夜であったため、一家は全員就寝中であり、外で起きている異常な事態に気づいた者はいなかった。

 そして朝、学校に出かけようとした女子高生は家の前で倒れている着ぐるみを発見、親を呼んだものの警察になんと説明したものかわからず大変難儀した。警察ではお嬢さんのストーカーが犯人の可能性があるからしばらくは周辺に警戒してくださいという指導をした。

 それからしばらく後、本当に彼女をストーカーしていた男が逮捕されたのである。着ぐるみの件については当然、必死に関与を否定したが。

 そんなこともいざ知らず、店の面々は今日も暇だった。

 大滝が新聞を読みながら、ストーカーが逮捕された記事を見つけて怖いな、と思っていると、安見にストーカーなんてしちゃダメですよ、といじられ、なんでそんなこと言われなきゃいけないの? と少し悲しくなった。