「仮装を取り入れるってのもなかなかいいアイディアかもしれないな」と大滝は言い、「勝算を見出さないでください」と安見に拒絶された。


 岩野は視界の悪い着ぐるみ姿のままあちこち動き回り、商品を落とし、それを拾って戻し、また別の商品を落とし、とバカの無限地獄状態に陥っている。


「そろそろ脱げよそれ」


 安見に言われて、あっ、脱いでもいいんだと思った岩野はようやく着ぐるみを脱いだ。


「……岩野の生写真付きでその着ぐるみを売るというのは」

「だから変なとこに活路を見出さないでくださいって」


 その着ぐるみが忽然と姿を消したのは翌日である。


「どこに行ったの? クリーニング出した?」


 商品の行方を心配する大滝に、安見は俺は知りません、と答えた。安見が知らないなら岩野も知らないかな、と失礼ながら大滝は思う。

 念のため岩野に確認したが、「わかんないです!」と元気よく返され、大滝はうん、わかった、と微笑んだ。


「いやでもそんなでかいもの普通無くなります?」


 安見は訝った。