店の前に置いてある塗装の剥げたベンチに、安見と岩野は座っていた。あまりにも客が来ないので、日向ぼっこをしに来たのだ。堂々たるサボりぶりだが、これに関しては福利厚生の一環として大滝も公認していた。

 すると近所の高校の制服の女子が近づいて来た。目当ては岩野だ。あの人もしかしてかっこいいんじゃない? ちょっと確かめてみない? という関心・意欲が態度に出ている。安見はなにが起きたかわかってゲンナリした。

 岩野と女子たちそれぞれのツーショット写真まで撮らされて非常に強いストレスを受けた安見は、早急になんらかの策を講じなければならないと考えた。

 要するに、日向ぼっこをしてもいいが岩野の面が良いことが外からわからなければいいのである。ではどうすればよいか。

 数分後、剥げたベンチには安見と、愛くるしいくまの着ぐるみが並んで座っていた。着ぐるみの中身はもちろん岩野である。

 するとどうだろう、また別の女子高生がやってきた。今度は顔が見えていないから大丈夫だろうと思った安見、くまの着ぐるみと女子高生の写真を撮らされるに至ってまたしても強いストレスを受けた。

 やけになって自分はサンタのコスプレをしたら、大滝が出てきて「楽しそうだな」と言った。安見はサンタの帽子を地面に投げつけた。