「それが本当なら、俺たち毎日肝試ししに来てるようなもんですよね」と安見。

「そうかなあ。特に何も見たことは……あるな……」


 大滝はバッチリ安見を見て言う。


「俺を霊的なもの扱いするのやめてくださいね」

「だって……」


 心が読める人間を従業員側に抱えていることを、大滝は時々忘れそうになる。従業員からしておかしかったじゃないか。

 ともかく、はっきりした原因はわからない。大滝はやっぱりやめちまおうかなこんな店、と思った。

 自立して、自分の力で生きていく。そんなことをもう考えてもいい頃かもしれない。でもやっぱり嫌かも知れない。隣で安見が「くそ人間が」と悪態をついた。


「ていうか、探偵がちょっと調べたくらいでわかるくらい単純なことなんですかね。この店がおかしい理由って」

「どうだろう。逆にそんなに複雑なことなんだろうか」


 数日経って、探偵が泣きながら連絡を寄越した。