体調が良くない。バナナの食べ過ぎだろうか。

 なにか違う理由じゃないかと安見は言った。その安見も、なんとなく顔色が悪かったし、岩野は口数が少なくなり、いつも泣きそうな顔をしてマネキンに挨拶をしている。

 なんか体が重い、やたら悲しい気分になる、家の中に気配を感じる、などなど。安見も全く同じ目に遭っているという。


「やっぱり霊的なやつなんですかね」


 と安見。


「怖いな」


 でかい図体で、大滝は震えた。

 しかし、一番まずいことになっているのは岩野である。日に日に顔色が悪くなり、毎日一度か二度、ごめんなさぁぁぁい、と絶叫しながら泣くのだ。なにを謝っているのだと訊いてみても、本人は涙と鼻水を流しながら首を振るばかりで、まったく要領を得ない。


「これは女がらみかもしれませんよ」と安見が言った。