三つは赤い面、一つは黒い面。赤い面はあまり差異がなく、表情と赤の濃さの微妙な違いで見分けるしかない。


「あれは常にあの順番で縦に並べなきゃいけない。仮にどれかが売れて無くなる分にはいいが、上下を入れ替えるのだけは絶対にやっちゃ駄目だ」


 あれにはちゃんとした序列があるんだよ、と的屋は続けた。


「一、餅を喉に詰まらせて死んだじじい。二、老人ホームでじじい同士の喧嘩に負けて死んだじじい。三、詳細は不明だが死んだじじい。四、生きてるじじい」


「はい?」


 大滝はよくわからなかったので、同じ説明をもう一度聞いたが、やっぱりわからなかった。


「ともかく、それぞれのモチーフはそんなところだ。わけがわからないだろ? 俺もわかんねえ。だけど、そういう面こそ好きそうだもんな、お宅のじい様は」


 厄介なものを押し付けられたね、お気の毒に、と結び、的屋は帰って行った。外に出るときは女児向けアニメのお面をつけていた。顔を見られるのが恥ずかしいそうだが、どちらが恥ずかしいのかわかったものではない。

 大滝は気の毒がられてももう遅いので、ただただ落ち込むしかなかった。

 その後この的屋には、岩野が勝手に黒い鬼の面を被ったところ外れなくなり、もう一度世話になることとなる。