「一、二、四、三……いや、二、一、四、三」


 ぶつぶつ言って的屋は、黒い靄の中へ入って言った。


「あれ大丈夫ですか? あの人死にませんか?」と安見。「死体とか見たくないんですけど」

「ちゃんと心配してあげようよ」

「なんかすごいですね。オレも近くで見たいな」

「岩野、これは遊びじゃねえ。死にたくなかったら近づくな」


 大滝は楽しげな岩野をけん制した。

 的屋の背中はもはや靄の中で見えなくなっており、一体その向こうで何が起きているのかもわからない。安見が心を読めるので、死んではいないことはわかるのだが。

 それからどれほどの時が経っただろうか、ふいに靄がかき消え、煤のようなもので顔を真っ黒にした的屋が出てきた。


「大丈夫か?」


 大滝が慌てて駆け寄ると、「ああ」とこともなげに頷いた。安見がスタッフルームから持ってきた新しいタオルで顔をぬぐいながら、的屋は次のように解説した。


「いいか。今回問題になったのはあの四つの面だ」