「あの鬼の面のコーナー、なんとかなりませんか」


 安見が言うのは、工芸品の中でも鬼のお面が多く集まるコーナーのことだった。


「なんか、視線を感じて不愉快なんですよね」

「そう? かっこいい陳列だと思うけど」


 ずらりと鬼の面が並んでいる光景は迫力がある。


「かっこいいより不気味ですよ。通るたびに不気味だ。トラウマになりそうです」

「そうかなあ」


 安見はそのあたりの感覚が大滝より遥かに鋭敏なので、どうしても気になるところがあるのだろうか。


「わかった。ちょっと考えてみるわ」

「お願いします」


 自分にはそういうセンスはないんだけどな、と大滝は常々思っている。なんとなく似たようなものを寄せ集め、それっぽくしているだけだ。でも従業員が良くないと言うのだから、センスが無いなりに何かは考えないといけない。大滝は珍しく残業をした。