「中に入ったら眠くなったんでそのまま寝ました」

「中に入った」

「入りました。なんかあったかくて気持ちよかったなあ」


 うっとりとしている岩野から一定の距離を取るべきか、大滝は悩んだ。なにしろあの得体の知れない球体の内部にいたのだ。何か宇宙生物的なものに寄生されていて、岩野の頭がぱっかりと割れ、中の生き物が突然襲ってこないとも限らないではないか。こんなことを考えたらまた安見は馬鹿にするのだろうけれど。

 しかし岩野は何も変わらなかった。せめて少しぐらい利口になればと、後に安見に嫌味を言われるほど、いたって通常運転だった。


「また来ないかなあ。そしたら、店長と安見さんも入ってみてくださいよ」


 大滝と安見は、絶対に嫌だ、と思った。