大滝が目覚めたとき、岩野はどこにもいなかった。帰ったのかな、と思った大滝がふとスマホを確認すると電波は正常に通じており、ならばとテレビをつけてみれば、テレビも正常に作動した。

 慌てて外に駆け出すと、屋上はいつもの屋上に戻っており、巨大な黄金の球体など影も形もない。だとしたらもう屋上に行っても大丈夫だろうか、と大滝は屋上に進入した。

 そこですやすや眠っている岩野を、大滝は叩き起こした。


「大丈夫か? なんともないか?」


 岩野は目覚めるなり至近距離にある強面に驚いたものの、周囲を見回して状況を理解したようだった。


「あれ、月は」

「消えた。それより、何があった」


 大滝の問いに、岩野はうーん、と緊張感のない声を出す。