リサイクルショップおおたきは、大滝が祖父から受け継がされたいわば「負の遺産」である。

 大滝の祖父は非常に自分勝手な人物で、大滝にはガラクタにしか見えないものを一時大量に収集したかと思うと、ブームが去ったあとはこのクソ田舎町の、絶妙に車の出入りがし辛い国道沿いの土地にリサイクルショップを作り、さらに隣の美容室が廃業したと見るやそこも買い取って在庫置き場とした。

 こんなことをしていては出費が嵩んで仕方がないのだが、そこはそれ、こんな道楽があっさりできてしまうぐらいの財産を大滝の祖父は持っていた。素直にすごいなと思う反面、これ自分が死んだ後のこと全然考えてねえだろ、という呆れもある。

 実際大滝がここを任されたのも、祖父が面倒になって、「威吹。お前、店やれ」と言い出したのが始まりだった。祖父の財産で生きて行く気満々だった大滝はどうしたものかと思い一度は反発してみたが「社会勉強」みたいなもっともらしい説教をたれられた挙句、「やらないと家から追い出しちゃうぞ」とかいう脅しそのものの展開があり、結局従わざるを得なくなったのである。大滝は祖父が管理するマンションに住んでいた。

 ちなみにこの祖父は存命だが、いまは日本のどこかで自分より何十歳も若い女とよろしくやっているらしい。大滝が彼女の一人も作らずやりたくもない店をやっている間に。ふざけた話である。