今日は月がでかいらしいと聞いて外に出てみると、屋上に月が乗っていたので大滝はちびりそうになった。

 本物ではなくレプリカの月である。一体だれがこんな手のこんだいたずらをしたのだろうか。そもそもこんなことが可能なのか。


「誰があんなことを?」


 安見は誰があんな馬鹿なことをするもんですかと言い、岩野はわかんないですと笑った。確かに、そんなことをしている様子の者はいなかったし、大体の時間、三人はスタッフルームで暇をつぶしていた。互いの行動を監視していたわけではないが、少なくとも、あんなでかいいたずらを仕込む時間がなかったことは明らかであった。


「どこに通報すればいいんだ……」


 大滝は頭を抱えた。「警察とかNASAとか……」と安見が半ば夢を見ているような目で言った。正直夢であってほしかった。

 国道を行く車はこんな事態になっているというのに、一台も止まらない。「またあのリサイクルショップ変なことやってるよ」としか思ってないのだ、多分。