順番はじゃんけんで決めた。

 大滝、岩野、安見の順だ。トップバッターを引いてしまった大滝は少なからずショックを受けたが仕方なくその格好でコンビニに入っていき、トイレを借り、それだけでは申し訳ないのでコーヒーを三つ買った。

 そうしてコーヒーを見た安見は大滝に「そういうの偽善って言うんですよ」と冷たく言い放った。

「やらない善よりやる偽善って言うだろう」

「要りません。迷惑です。偽善と言うよりもはや悪」

「そこまで言わなくても……」


 次は岩野だ。トイレ借りますと店員に良い、ありがとうございましたと言って出てきた。ある意味礼儀正しいが、心の底から一緒に行かなくてよかった、と大滝たちは思った。 

 そして最後は安見。無言でトイレを借り、無言で出てきた。


「なんか図々しいヤツって感じですね」


 岩野ににこにこ言われて、安見はうるせーな、と舌打ちをした。その時。

 コンビニの駐車場に、もう一人学ランの男がいることに三人は気づいた。

 岩野が、「あ、あの子……」と言う。昼間来たのと同じ人物らしい。 

 安見はじっとその顔を見た。相手もじっと顔を見てくる。そして相手は、少し表情を緩めると。

  ――いつの間にか消えていた。


「ね、安見さんだったでしょ」と岩野。

「ああ、間違いなく安見だった」と大滝も同意した。

 安見だけが、「こわ。そんなわけないでしょ」と否定した。

 不思議なことだが、その日から安見は少しだけ、ディズニーランドへの苦手意識が薄くなった。