「おれ、ちょっとやってみたいことあるんですけど」

「どうせろくなことじゃないだろ。俺は嫌だね」安見はきっぱりと拒絶した。

 まあまあ、と岩野はにこにこしながら、売り場から何かをもってくる。三着分の学ランだ。そんなものもあったのか、と大滝は驚いた。つくづく在庫管理ができていない。


「これを着て、三人で修学旅行ごっこしませんか」

 安見と大滝は同時に「殺すぞ」と言った。
 
 三人の学ラン姿は見事に似合っていなかった。

 全員学ランを着るような歳ではとっくにないのである。コスプレ感というか、無理してるおっさん感が見え見えだ。


「これ着てどこに行くっつんだよ」


 安見は血走った目で悪態をついた。


「コンビニでトイレ借りましょう」

「なんだそれ。罰ゲームか?」


 この辺でできる修学旅行っぽいことはコンビニでトイレを借りることだと、岩野は思いついたのだ。これは岩野自身が、迷子になってコンビニでトイレを借りた思い出が元になっている。


「全員で入るか、一人ずつ入るか、どっちにします?」

「どっちにしろ最悪なのは変わりないな……」

 大滝は少し悩んだ。

「ほかの方に迷惑がかかるかもしれないし、一人ずつ様子を見ながらにしよう」

「なんか真面目くさってますがもう迷惑ですよ。この計画自体が」安見は呆れる。