「それ本当に学生だったんかなあ」


 修学旅行に行けなかった大滝は思う。それは、修学旅行ごっこ……ではないのか、と。修学旅行に行けなかった学生が、制服姿で適当に旅をして修学旅行と呼んでいる、といったような。


「さすが店長、陰キャの考えることはお見通しですか」

「その言い方やめろ」

「でも店長ぐらいですよ、そんな気持ち悪いことする学生」

「俺はやってねえよ」


 やろうとはしたのだ。

 ただ、怪しいかなと思ってやめた。結局一人ぼっちだし。

「近所の子なんですかね」と岩野。

「さあな」


 店にある防犯カメラは録画機能のないダミーだから、確かめようもないのだった。それに、顔を見たところで誰だかなんて知るはずもない。

「あ」


 突然岩野が、何か思いついた。

 積極的に聞きたくはなかった二人だが、ひとまず続きを聞く。


「そういえばあの子、安見さんと同じ場所にほくろがありましたよ」


 なにかと思えばそんなことか、と大滝は眉をしかめた。


「だからなんだよ」と安見も言う。
「安見さん、学生の頃眼鏡してました?」
「眼鏡?」


 安見は思い出したくもない自分の学生時代の風体を思い出す。というか、そうするまでもなく、眼鏡をかけていたことは覚えていた。ただ、すぐに肯定するのが癪だっただけだ。