「勿体ないのか、おれは」大滝は笑った。

「うん」早坂はお茶を一口飲んだ。「あと少し運気が上がれば、すごく良くなるのにな、って」

「運気」

「そう、運気」


 大滝は笑いながら、完全にまずい流れになったと思った。このあとでかい石かでかい壺が出てくるやつだ。でかい石もでかい壺も、店に売るほどあるというのに。というか売っているのに。

 早坂は以下のように捲し立てた。


「というわけで、このでかい石とでかい壺を買うと、大滝君はすごく幸せになれるんだよ。私も使ってるんだけど、素敵な彼ができたしお金も溜まったし、今最高にハッピーって感じかな。こういうことってたくさんの人に広めるべきじゃない? だから、今はセットで五千円引きっていうのをやってるんだよね」


 大滝は泣きそうになってきた。もしかしたらこうなるんじゃないかとうっすら思ってはいたが、実際そうなってみると悲しみが深い。あまりに深すぎる。いっそ騙されたふりをして石も壺も買って、うちの店で売ろうかと思ったほどだ。

 その時。 大滝の肩に、誰かが手を置いた。