「なんなら、代わりに行ってうまい飯食ってくる?」

 大滝は思いつきを言った。

「多分誰も俺の顔なんか覚えてないし、誰が行ってもばれないと思うから……」

「卑屈すぎだろ。行きませんよ他人の同窓会なんて」

「じゃあ岩野にでも譲るか。ここ、」と大滝はハガキに印字されてある会場を指さした。「飯はうまいから」

「いくら飯がうまいからって、他人のふりして同窓会出ますかね」

「出ないか、普通」

「出るわけないでしょう」


 しかし、岩野は普通ではないので「おいしいご飯!? マジすか、行きます行きます!」とノリノリで参戦を決めた。


「お前は大滝威吹として参加することになるから、忘れないでくれ」

「はーい」


 替え玉なんて相当ひどいことをしているのに、こんなに喜ばれるといいことをしているような気分になって不思議である。

 かくして、岩野は大滝として同窓会に出席する当日を迎えた。