東条くんの隣に女の子がいる。
彼と同じ高校の制服を着た、とても綺麗な女の子。
なにやら親しげに東条くんと会話していた。

誰……だろう。
同じ制服だし、クラスメートとか?
仲良さそうだし、友達……なのかな。

東条くんの友達は、みんなもっと早い電車に乗っているって聞いたけど。
今回の運休でたまたまこの電車になったのだろうか。

(……どうしよう)

声、かけられない。
だって二人は親しげで楽しそうで。
今私が声をかけたら邪魔者になりそうで。

こわい。


駄目だ。
お願い、キャンディ。勇気をちょうだい。
だって今日決めていたじゃない。
最後の勇気を出すって。 

だから、がんばる。頑張らないと。

「……と、東条くん……っ!」

でも精一杯の声は東条くんには届かなかった。
東条くんは全く振り向かない。
となりの女の子との話を続けている。

次の瞬間、目の前での光景に私は今度こそ本当に動けなくなる。

女の子が、東条くんに何かを話しかける。
すると東条くんは少し困ったように笑って、女の子の頭に、一瞬、撫でるように触れた。

「……っ」

胸が押し潰されたように痛い。
これ以上見ていなくない。
私はうつむいてそこから離れた。