なんか。すごい。

見ているだけだったのに、普通に話している。
私の言ったことで笑ってくれている。
こんな嬉しいこと、ある?

だけど楽しい時間はすぐに終わる。
そうしているうち、彼の降りる駅まであとわずかになってしまった。
車内アナウンスが流れてくる。
彼は鞄を肩にかけ直した。

……楽しかったけど。
まだ、駄目。
今日の目標を達成していない。

「あ、あのっ……」

「なに?」

「………もし、よければ……」

頑張れ、私。いける。大丈夫。
勇気のキャンディ食べたもの。

「なっ、
名前、を、教えてもらってもいい?」

言えた!
そう実感すると顔がどんどん熱くなっていく。

「……なんて、ど、どうでしょう」

ついついそんな余計なことを言ってしまったり。
ああ、ドキドキと恥ずかしさで破裂してしまいそうだ。

彼は、……そんな私を見て微笑んだ。

「……東条(とうじょう)です」

「え?」

「東条 (つるぎ)。高二です」

「と、東条くん……」

「君は?」

東条くんがわずかに首をかしげ、私の目を見つめる。

「え、あ、私!?……わたしは、西園寺白雪です。高二です」

「同学年だったんだ」

「そ、そうみたいだね」

東条くん、落ち着いているから三年生かと思っていた。

「よろしく、西園寺さん」

「あ、う、うん!よろしく、東条くん」

電車が停車し、駅についた。
東条くんは昨日よりも砕けたような笑顔を浮かべ、私に手を振りながら降りていった。