「それでこれ。……昨日のお礼に」

「え!?」

必死で話題を探す私に、彼は鞄から取り出した何かを差し出した。
それは手のひらにおさまるほど小さな包み。
透明なセロファンの袋に、キラキラ光るキャンディが入っていた。

「わああ、綺麗…………って、あの、いや、そんな!却って申し訳ないです!そんなお礼をされるようなことしてないのに」

「そんなことないよ。昨日、本当に気分が悪かったから、君に声をかけてもらえて助かりました」

「え……でも……私が渡したのなんて、ただの普通のノド飴なのに」

「これも普通の飴だよ。でも、…受け取ってもらえたら嬉しいです」

そう言って私を見つめる彼の目は、キャンディよりもずっと透き通っていて綺麗。
顔が熱くなっていくのがわかる。

まずい…。
顔が、赤くなっちゃう。

彼に赤らんだ顔を見られるのが恥ずかしくて、私はうつむく。

「あ、あの……」

「うん?」

「キャンディ、ありがとうございます。……大切に食べます」

「良かった。こっちこそありがとうございます」

やがて、電車は彼の駅にとまる。

「それじゃあ」

彼はそう言って、微笑むとサッと電車を降りていった。