「と、言うことで!行ってきま〜す!あっ、お祭りデート楽しんでね!浴衣は2人分用意しといたから、写真まってる!」
バタンッ
「「……」」
風のように出張に行ってしまった。
驚きすぎて口を開けたままだけど、言葉も出ない。
「恵美さんがいない今、俺達に何が足りないかっていうと家事だね。まぁ、できないこともないだろうし、分担して何とか2週間乗り切ろうか」
「う、うん」
なんて頼もしいんだろうか。
でも、お母さんが出張に行けて良かったと思った。
凌と2人きりになれるからという理由では無い。
また、別の理由。
「穂乃、なんか嬉しそうだね」
「えっ」
「ほっとしたって表情してる」
バレてる……。
「実はね、元々お母さんは出張を考えてたらしくて」
「そうだったんだ」
「でも、そうすると私1人になっちゃうから、諦めたらしいの」
「その出張は恵美さんにはメリットがあったんだね」
「うん。普段じゃあ味わえないプロジェクトがあるらしくて。お母さんにも声かかってたみたい」
「それで、俺がいるから行く決断をしたのか」
「うん。だから、嬉しいの」
「いい娘だね」
「まぁね」
少しだけドヤ顔で言った。