「それじゃ、教室戻ろ?私、何も言わないまま抜け出してきちゃったし……」
本当に迷惑かけてると思う。
そういえば、私がこの空き教室に来た理由って、教室から逃げ出してきたからだったような……。
凌が来たから、忘れてた……。
「まって」
空き教室を出ようとしたけど、凌に止められた。
「え?」
「もう少し一緒にいようよ」
「え、でも」
「クラスなら問題ないよ。朝陽と本田が分かってると思うし」
「そ、うかな」
グイッ
「えっ」
凌に腕を引っ張られて、抱き寄せられた。
ドクンドクンっ
自分の心臓がうるさいのがよく分かる。
ぎゅっ
私も抱き締め返した。
「もう少しだけでいいからさ」
「う、ん」
何だろ、不思議な感じ。私も、もう少しこうしていたいと思ってしまった。
「穂乃」
「うん?」
凌の顔が少しずつ近ずいてくる。
こ、これはっ!
もしかしてキス!?
「お、お手柔らかにお願いしますっ」
私は目をぎゅっと瞑った。
「ふっ」
チュッ
唇に一瞬、柔らかいものが当たった。