「ど、どうして?」
「傘を届けに行った時にって言ってたかな」
朝陽とは小学生の時、帰り道は途中まで一緒だった。由姫ちゃんの家の近くで、朝陽とは方角が変わる。
だから、朝陽と由姫ちゃんとは3人でよく一緒に帰っていた。中学生に上がると、それぞれ部活もあったし、あとは色々とね……。
「傘を届けに……あっ」
思い出した。
「あの時、なんかの事情で皆で帰れなくて、1人で帰ってた。小降りだったけど、傘さしててその時、空が光ったんだよね……」
「うん」
「直ぐに雷だって気づいて、その瞬間に“傘に雷が落ちる”って思って……」
「うん……」
……話を聞いてくれてるけど、凌が笑いこらえてる気がする。
まぁ、笑われるのは分かってるから、恥を捨てた。
「傘をブン投げて、走って帰ったんだよね」
「え?ほんとに投げてそのまま帰ったの?」
「うん」
「面白いね」
「まぁ、今はそんな事しないよ?」
「分かってる分かってる」
バカにしてるな。

