きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように


 目を覚ましてキッチンに向かうと、ちょうど父が野菜をウッドテラスに運んでいるところだった。

 「寝られたか?準備は出来たからいつでも始められるぞ」

 「うん、ありがとう」

 父は私の顔を見てそう言うと、それを運んでいった。

 ガラス越しにテラスを見ると、そこには二人前の材料が置かれてあった。

 「厚着をしてくるんだよ」

 父はガラス越しに叫ぶと、何やら忙しそうに手を動かした。

 それにこくりと頷き、上着を取りに寝室に戻る。

 まだ9月中旬だというのに夜は冷える。

 席に着くと、父はすぐに肉を焼き始めた。

 相当お腹が空いているのか、この瞬間を心底楽しんでいるのか、どこか浮ついているように見えた。


 
 「ほら、次の肉も焼けたぞ」

 流れ作業のように肉を焼き、それを私の器に入れていた。

 気遣いは有難いが、父にもしっかりと食べてほしい私は複雑な心境だった。

 「ありがとう。ちゃんとお父さんも食べてよ?」

 「分かってるよ」

 私が牛肉を頬張っているところを微笑ましそうに見守ったあと、父も牛肉を咀嚼した。

 それを噛み砕いて飲み込むと、紙コップに注いであった冷水を口にする。

 「ねぇ、もうお酒は飲まないの?」

 「あぁ、もうやめたよ」

 それには、そっか、とだけ返す。

 父はかつてよく夕食の前後にお酒を飲んでいた。

 特に母の死後は毎日2缶を空けていた。

 それが、最近は全く飲まなくなった。

 今日は特別な日なのだから禁酒を解禁すればいいのに、と思う。

 父が禁酒している理由が推測できている私はそれ以上は言えなかったけど。

 そんなことを考えていると、父は私の顔色を窺ってか、笑い飛ばすように口を開く。

 「お酒が無くても白米は進むからな」

 「そこはやっぱり白米なんだね」

 今となってはもう見慣れたが、白米をつまみにお酒を飲んでいた父を何度か笑ったことがある。

 それには少しどころか、かなり変わっているな、と幼いながらに思っていた。

 「あぁ、結婚してからは白米だな」

 「そっか、もっと前からその組み合わせなのかと思ってた」
 
 「それが違うんだな、独身の時はおつまみを作っていたよ。でも、結婚してからは俺が料理をすると恵が代わりに作ってくれようとしていたんだ。だから、迷惑をかけたくなくてさ」

 「お父さんらしいね」

 あまりにも父らしい返答に、そう言わずにはいられなかった。

 過剰に気遣いをしてしまう一面が、この独特な食べ方を生んだと思うと微笑ましいし、母には感謝したい。

 「それは褒めているのか?」

 「さぁ、どっちだろうね」

 茶化すようにそう言うと、また牛肉を頬張る。
 
 一度白米にバウンドさせて肉を食べた後にタレの染み込んだ白米を口にする。


 これがたまらぬ美味しさで一度この食べ方をしてしまえばもう抜けられない。

 同時に、この非日常も一緒に食べてしまおうとして父と他愛のない話を続けながら胃に物を入れていった。