きみの瞳に映る空が、永遠に輝きますように


 その翌日もまたお見舞いに行った。

 今日は手ぶらで、ただ透真くんと話したいがゆえに学校帰りに病院へ向かった。

 「いいから帰れよ。頼むからもう来ないでくれ」

 歩いていると、怒声が聞こえて、思わず足を止める。

 私はその声に聞き覚えがあった。

 だからこそ気にはなったものの見ようとは思わなかった。

 「待ってよ」

 怒声に対して女性が彼を止めようとする。

 「帰れよ」

 続いて涙の混ざった絞り出したこえで再び、帰れ、と女性に言った。

 女性は、分かった、と言い残して再び口を開くことは無かった。

 それから靴がコツコツと一定のリズムを刻み、こちらに向かってくる。

 私は慌ててあたかも聞いていなかったとでもいうように平然を繕って前に進んだ。
 
 曲がり角でその女性と出会ったが、顔色は蒼白で俯いたまま歩いていた。

 ざっと見ただけだが、どこか透真くんの面影があった。

 それを見て、あの言い合いが透真くんとそのその女性によるものだと確信した。

 女性は相当ショックだったのだろう。

 一度私が振り返ると、肩を震わせながら泣いているように見えた。

 それから歩き続けていると、透真くんが手すりに掴まりながら歩いているのが見えた。

 それを見て、また足を止める。

 透真くんは疲れ切った様子で、何度か足がもつれているようにも見えた。

 しかし、言い合いを見ていたと思われるのが嫌で、話しかけるタイミングが分からずにいた。

 下を向いて時間の経過をただ待つ。

 とはいえ、何もすることのない時間は私に意地悪するかのようにこれでもかというほどゆったりと進んでいく。

 俯いて突っ立っている私は、傍から見れば可笑しな人間だろうし、ストーカーにも見られかねない。

 それを気にしながらも、この状況を早く脱したくてたまに透真くんに視線を送りながら待ってみるが、結局、タイミングが掴めずに突っ立っていた。

 そんな時、突然、ドンという大きな音がした。

 それは、誰かが倒れたような音だった。加えて藻掻くような声も聞こえる。

 私はその声にただことではないと思い顔を上げる。

 すると、そこには膝から崩れ落ちた透真くんの姿があった。

 私はここが病院だということも忘れて慌てて駆け寄る。

 「っ……」

 突然力が入らなくなったのか、透真くんは何度も、動け、と鼓舞するように頬を濡らして悔しそうに足を叩いている。

 「大丈夫だから」

 無責任ながら私にはそう言うことしか出来なかった。