世界が変わる日

受け取ったメモ帳の表紙には

「1-4 今井 楓」 だけ書いてあった。

先生、わざわざ作ってくれたんだ。申し訳ない。


ソファに座り1ページ前に戻って見てみると

"寒くない?"

"ちゃんと食べれてる?"

体を気遣うメッセージが多い。

だけど、前のページに戻れば戻るほど言葉がナイフのように刺さってくる。

"そんなんじゃ修学旅行も行けないよ"

"教室に戻りなさい"

そうだよね。所詮、皆他人なんだもん。

優しく感じるのは文字だけ。今日の先生だって心の中ではめんどくさいのが来たって思ってる。

もう帰ろう。

メモ帳を机の上に置いて180度回転しドアの方へ向かうと、山のようなプリントを抱えた先生と目が合う。

さっきまで何とも思わなかったのに、今は何故か敵に感じてしまう。

プリントの山を机に置いて、すぐにメモ帳にスラスラと文字を書き始めた。

"明後日までにやってきてほしいって"

そう困ったようにメモを渡してくる。

"分かりました。ありがとうございます"

だけ書いて、プリントをまとめてファイルに入れた。

"病院は行ってるの?"

一瞬手が止まってしまった。

ぎこちなく頷けば、微笑む先生。

居づらくなって会釈して保健室を出た。