甘露寺 えま


父のお葬式に出ています。
17年も会ってないし出席しようか悩んだ結果
最後ぐらい来てみました。


とっても痛たまれない。


やっぱり残るんじゃなかったかな…
御手洗行こうと立ち上がった時
隣の部屋から声が聞こえてきた。


『いいか。京、蓮。
母親もお前たちを育てられないそうだ。
みんなの前で言うんだぞ』




『施設に入りたいですって。』




耳を疑った。
聞き間違いだと思い予定通り御手洗に向かい
席に着いた。


祖父らしい人が咳払いをし話し始めた。


『息子が亡くなった。それに伴い
嫁の連れ子のことなんだが…あー…
引き取れる者はいないか。』


部屋がどよめく。


『連れ子?無理よ、うちは精一杯だわ』

『うちもちょっとまだ子供が幼しい…』


皆こっちに押し付けるなと言わんばかりに
口々にささやく。


『どうしたい?京、蓮』

やっぱり聞き間違いなんかじゃなかった。
制服的に高校生と中学生くらいの子だ。


こんな子供に…


『俺たちは…しせ』



「はいっ!!!」



『え?』


親戚一同が私に視線を向ける。


「私が育てます。」


『意味わかってるのか?』

『子供も育てたことないから分かってないのよ』


「お金ならあります。ここの誰よりも稼いでるので。そんな事より…」


2人の顔を見る。私を見る目はとても
見ていられないくらい悲しい顔をしていた。


「施設に入りたいなんて言わせようとするなんてありえない!!!
引き取ります!いいですよね?」


『まぁ良い。どうせ誰も引き取らない。
お前ら、施設かこの娘のとこどっちに行きたい。』


「あなた達はどうしたい?」


『俺たちは…』

周りの顔色を見ている。
幼い子供に…


弟と思われるこの顔を両手で挟み



「私はあなたの言葉が聞きたいの。
どうしたい?」



『兄ちゃんと…離れたくない!!!』



目に涙をいっぱい溜めて
私にそう言ってきた。


「分かったわ。私と一緒においで!
ふたりで。」



『本当にいいんですか?』



お兄ちゃんが疑いの目でこちらを見つめている。



「もちろん!さっ行くよ!」


そう言って2人の手を引っ張っり部屋を後にした。
2人の顔はどこか不安げで
どこか安心した顔をしていた。

顧問弁護士の人に電話をして後の手続きを頼み
タクシーに乗り込み2人を連れて買い物に出かける。


「さー!生活に必要なものたくさん買うよー!!」


『あの…』


「名前そうだ名前よね!
私は甘露寺えま。よろしくね!」


『俺は京です。朝比奈 京。
こっちが弟の朝比奈 蓮です。』


蓮くんと目を合わせるとペコリと
お辞儀をしてそっぽを向いてしまった。


「京くん、蓮くん。急に連れて来られて
すごい困惑してると思うけど絶対にあなた達を
引き離したりしないから安心してね。」


そう言って2人を抱きしめると
兄の京くんがホッとしたような顔になる。

お兄ちゃんだな〜

そんなことを思いながら家具や服を選び
早急に運んでもらう。


京『えまさんって一体何してる方なんですか?』


「アパレル関係よ。こう見えてちょっと
すごい人なの私!」



しばらく仕事よりもこの子達との時間を
優先した方がいいかな…


夜ご飯を買いに食品を見ていると


蓮『ねえ。』


「どうしたの?」


蓮『これ兄ちゃんが好きなやつ…。』


顔を真っ赤にして買ってほしそうに
している蓮くん。


「そうなんだ。じゃあたくさん買おうか!」


蓮くんの顔がパッと明るくなり


蓮『えまさんありがとう…。』

カワイイッ

京くんが好きだというお菓子を1箱買いに
買い物を続ける。

この子もきっとすごく優しい子なんだな。
それなのにあの人達は…


家族になろう。精一杯。



愛とか分からないけど沢山の愛を
この子達にそそぎたい。



沢山の世界を見せてあげたい。


そんなことを思いながら家へ帰った。