「うん、待っててもいい?待ちたいんだ」


 その言葉を聞いた時、わたしはどこまでも浅はかでずるいのだと感じた。
 そして、向き合うために行こうと思った。
 
 なんて優しいのだろう。どこまで優しいのだろう。なんでそんなに優しくしてくれるのだろう。


 思わず、涙が溢れそうになる。
 そう思った時、テーブルの木目の色が変わった。もう溢れていた。


 「アイス、溶けちゃうよ」そう言いながら、腕を伸ばして親指の腹ですっと拭ってくれた。

 自分とは違う体温に涙が止めどなく溢れてくる。指で追いつかなくなって、ティッシュで拭いてくれた。
 

 落ち着いた頃には、2人のアイスはもうドロドロに溶けていた。
「溶けちゃったけど美味しいね」と言って食べるアユに、「今日、一緒に寝てくれる?」と言っていた。

 
 自分の声を聞いて初めて口からこぼれていたことに気づいた。
 アユはびっくりしたように大きな目をさらに大きくさせて、「いいよ」と少し目を細めて笑った。


 久しぶりのアユの体温を全身に触れて、ぎゅっとして眠りについた。
 同じ柔軟剤を使っているのに、とても優しい匂いがした。