翌朝、まぶたが重くて目を覚ますと、枕がしっとりとしていた。

 昨日見た夢を思い出せなかったが、久しぶりにフワフワしていて苦しかった気持ちを思い出し た。
 
 
 リビングに行くと、アユはにっこり笑って「おはよう」と言った。
 それは驚くほどにいつも通りだった。それは自分だけが取り残されているのでは錯覚するほど。


 アユはじっと顔を見た後で、そっと頬に触れ困ったように目を細めてから、「温かいので飲も」と言った。

 アユはいつも何も聞かない。その代わりに触って目を細める。それはどこか儚くて優しい。

 こういう時のわたしはずるくて小賢しいと思う。とても最低だ。
 それと同時に、この優しさはガラスのようでわたしには到底似合わないと思う。
 壊したくないのに、いつの間にか壊してしまう気がして触れたくない。
 でも気づいたら綺麗で触れてしまっている。いつも甘えている。本当に最低だ。
 
 アユがホットミルクを渡して、隣に座った。

 昨日の話はなかったかのように今日が終わった。